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Dr.北村の女性クリニックへようこそ

Q 歯周病で動脈硬化になるか

 動脈硬化を指摘されても不思議でない年齢ですが、内科で受診したときに、「お口を開けてください」と指示され、「歯周病がありますね。動脈硬化の原因になっていることがあります」と言われ驚いています。(67歳・女性)

 A 摘出された内臓から菌の検出も

 専門分化が進んだ医療の世界では往々にしてあることですが、僕自身も、歯周病と動脈硬化性疾患とが深く関係していることを初めて知ることになりました。今回は、歯科領域の門外漢であるDr北村からの回答であることをあらかじめご承知おきください。

 わが国ではまだ広く知られていませんが、歯周病と動脈硬化性疾患との関係については、既に2009年に米国心臓病学会と米国歯周病学会が合同で臨床家に向けたメッセージを発表しています。その内容とは、動脈硬化性疾患患者の診察の際は、歯科医と医師が綿密に連携すること、歯周病がある場合、細菌の除去と炎症を抑えるような治療を行うこと。また、歯周病患者の診察の際は、動脈硬化性疾患と関連があることを知らせるだけでなく、喫煙・家族歴・脂質異常症・高血圧などの動脈硬化の危険因子がある場合、生活習慣の改善や必要に応じて医学的に診断、治療をすべきであるというのです。

 歯周病が動脈硬化を進行させるしくみは不明ですが、最近の研究では、手術によって摘出した心臓弁や大動脈瘤(りゅう)の組織から歯周病菌が検出されているのです。

 菌血症という病気をご存じでしょうか。血液は本来、無菌状態に保たれていますが、抜歯時に一時的に口腔(こうくう)内にある細菌が血液中に侵入することがあります。抵抗力がある健康な人であれば、その細菌を排除できますが、エイズをはじめ免疫力が落ちてしまう病気があったり、抵抗力が落ちている高齢者、がんの化学療法や放射線療法をしている患者などでは、これが命取りにもなりかねません。抜歯時に、数日間抗生物質を服用するように求められるのはそのためです。歯周病も同様で、歯周病菌による菌血症が心臓・血管系に限らず、各種臓器の病気にさまざまな影響を及ぼすことになるようです。

 歯周病の診断を受けた以上、歯科医院を訪ねて治療すること、年齢からしても動脈硬化のリスク因子を有している可能性がありますから、食生活の改善、無理のない範囲での運動などを心掛けてください。自身でできる口腔ケアとしては、うがいの励行、食べ物の残りカスの除去、舌のケア、歯と歯肉、歯間や義歯の清掃などがありますが、時々は歯科医など専門家によって口腔清掃をしてもらうことが大切です。口腔内の乾燥もマイナスだそうです。原因となる病気がなければ、耳下腺、顎下(がっか)腺、舌下腺を刺激する唾液腺マッサージが有効です。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)