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自ら食べる力の継続に成果 富山県南砺市民病院、人工栄養法高齢患者へケア

南砺市民病院(南砺市井波、清水幸裕院長)は、食べる力が衰えて人工栄養法を導入した高齢患者に、専門チームによる治療やリハビリを行った結果、約60%が自力で食べられるまでに回復し、1年後もその状態を維持している人が25%に上るという成果を得た。いずれも、チーム医療導入前の2倍近くに上り、きめ細かな診断に基づく治療や訓練による効果がうかがえた。全国的にも数少ない取り組み。13日から茨城県で開かれる学会で発表する。

 チームは、総合診療科医師や看護師、歯科医、リハビリスタッフら14人で構成。2013、14年度に肺炎を主とする感染症や脳卒中などの治療を終え、人工栄養法を導入した70歳以上の患者を対象に、ケアを実施した。

 データがまとまったのは、13年度に同意を得た患者47人分。ほぼ全てが寝たきりや歩けない人だった。食べられない原因を分析したところ、治療済みの疾患とは異なる疾患に起因するケースが35%と、最も多かった。チーム中心メンバーの荒幡昌久臨床教育・研究センター長は「検査項目を増やしたことで、潜在的な疾患を突き止められるようになった」と理由を説明する。

 認知症と似た症状が現れる心不全、ビタミンB1欠乏、ホルモン代謝異常などが目立ち、これらを治療することで、食べる力が回復した。疾患の特徴に応じた飲み込み訓練や、リハビリによる改善効果もあったという。

 重い認知症や意識障害が原因となっているケースは29%と2番目に多く、投薬や、食事場所を自室から食堂に変更するなど気分転換を促す配慮が効果的だった。

 これらの取り組みにより、47人のうち、食べられるようになったのは60%にあたる28人。1年後の時点で、食べる力を維持していたのは47人のうち25%を占めた。

 チームによる治療やケア導入前の11年度は、食べられるようになった人が35%、1年後に食べる力を維持していた人が14%にとどまっており、13年度はともに2倍近くに伸びた。

 高齢者の終末期医療に詳しい名古屋大附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター長の植村和正教授は「60%が再び食べられるようになったというのは驚くべき成果。食べられない原因を老衰や加齢などと(ひとくくりに)せず、診断によって、しっかりと見極めたからだろう」と高く評価している。

 取り組みの成果は13、14日、茨城県つくば市で開かれる日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で発表する。荒幡センター長は「学会の意見も参考に、診断や治療技術をさらに高めたい」としている。

 本年度は、14年度に治療やケアを実施した人の1年後の状態を確認し、データをさらに充実させる。

◆人工栄養法◆

 食べることができなくなった場合に適用される手法で、管を胃につないで流動食を送る「胃ろう」や点滴などがある。延命に効果的とされる一方、流動食が食道を逆流し、肺炎を引き起こすなど苦痛をもたらすケースもあり、導入をめぐる評価は分かれる。日本老年医学会(東京)が2012年にまとめた指針では、導入しないことや、導入後に中止することも選択肢として示した。