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肥満は認知症を予防するのか

中年期に過体重あるいは肥満だった人では、正常体重または低体重の人に比べ認知症を発症しにくいことが、200万人近くを対象とした大規模研究結果から示された。

 過体重者や肥満者では、正常体重者に比べ15年後の認知症発症率が30%低かった一方、低体重者は正常体重者より認知症発症率が34%高いことが分かったという。

 研究を主導したスペインOXON Epidemiology社のNawab Qizilbash氏は、「過体重者や肥満者の認知症リスクが抑制されるとは予想外だった」と述べている。

 ただし、今回の後ろ向き研究は肥満と認知症リスク低下の関連を示しただけであり、因果関係を示したわけではない。

 同氏はまた、本研究では過体重者や肥満者における早期死亡リスク上昇がみられたことを踏まえれば、今回の予備的知見に基づいて認知症予防を体重増加の言い訳にすべきではないと指摘。「過体重や肥満に認知症予防効果があるとしても、その便益を得るだけの長生きはできないかもしれない」と述べている。

 「The Lancet Diabetes & Endocrinology」オンライン版に4月9日掲載された報告によると、今回の検討では、研究開始時に平均55歳だった英国の成人約200万人について、医療記録を約20年分解析した。15年間の追跡期間中に4万5,500人が認知症を発症していた。

 解析の結果、体重と認知症発症との関連は、被験者の生年や診断時年齢を調整後も認められることが分かった。認知症の危険因子として知られる飲酒や喫煙といった因子は、この結果にはほとんど影響していなかった。

 Qizilbash氏は、この関連性についての生物学的な説明はなく、さらなる研究が必要であるとしながらも、この知見からアルツハイマー病やその他の認知症の治療や予防への道が示される可能性があると説明。

 「認知症の発症機序や治療法開発に新たな考察を提供できる可能性がある。医師や公衆衛生の研究者、政策立案者も認知症ハイリスク者を特定する方法について再考が必要かもしれない」と述べている。

 この結果について同誌に付随論説を著した米ニューヨーク州立大学(SUNY)ダウンステート医療センター(ニューヨーク市)のDeborah Gustafson氏は、中年期の体重が15年後の認知症リスクに反映されるのかという点に疑問を提示。

 「解析対象数は多いが、方法論における疑問を考えるとこの結果が最終的な結論とはいえない。さらなる検討が必要だ」としている。