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認知症、どう向き合う 38年の研究一冊に 山口教授

厚生労働省の推計で、団塊の世代が全て75歳以上となる2025年に認知症の高齢者は700万人前後に達し、現状の7人に1人から、5人に1人に増えるとされる。「歳重ね いつかは誰もが 認知症」―。こんな一句を詠んだ群馬大大学院保健学研究科(前橋市)の山口晴保教授が「認知症にならない、負けない生き方」を出版した。認知症を受け入れ、どう生きるかを考える大切さを説いている。

 山口教授はアルツハイマー病の神経病理学やリハビリテーション医学が専門。認知症の実践医療の研究や脳活性化リハビリテーションなどに取り組んできた。

 著書は群馬大医学部卒業後、歩んできた38年の集大成的な位置付け。書名とは逆に「認知症に勝つとか負けるとかではなく、認知症と仲良く生きていこうという『生き方』の本」と山口教授。ユーモアあふれる筆致で、認知症の原因や前兆、症状、予防、治療などを解説している。

 第5章「認知症と『ともに生きる』」では、家族などに向けて認知症の受け入れ方やケアのこつをアドバイス。自らが認知症になった場合に備えるべきことも記している。

 05年は3人の労働世代(20~64歳)で1人の高齢者(65歳以上)を支える「騎馬戦」型社会だったが、55年には労働世代1.2人で高齢者1人を支える「肩車」型社会になると見込まれる。

 社会保障費が増え続ける現状を踏まえ、山口教授は「高齢者は自分の健康を守り、近所同士で助け合うことが大切。子育てしやすい環境も整備すべきだ」と訴える。地域包括ケアの時代に求められる「自助と互助」の観点から、山口教授が育成に力を入れてきた本県独自の「介護予防サポーター」なども紹介。「認知症を恐れることなく正しく理解し、豊かな老後を送ってほしい」と話している。

 「認知症にならない、負けない生き方」(サンマーク出版)は四六判、260ページ。1300円(税別)。