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小児慢性特定疾病:助成制度変更 患者6割、負担増 治療長期にわたる、小児がん家族懸念

今年1月の難病法施行に伴い「小児慢性特定疾病」の医療費助成制度が変わった。助成対象の疾病が増える一方、患者の自己負担額が引き上げられ、すでに助成を受けている患者の6割超に新たな負担が加わる。治療が長期にわたり、後遺症を発症するケースが多い小児がん患者の家族に、負担増への懸念が広がっている。

 東京都青梅市の小学1年、野口一樹君(7)は2歳の時、「腎明細胞肉腫(じんめいさいぼうにくしゅ)」が見つかった。小児がんの一種だ。再発のため入退院を繰り返し、現在の入院は5回目になる。

 父親(41)によると、従来の助成制度では、医療費と入院中の食費の自己負担額はゼロだった。新制度では月額で1万円以上になる見通しだ。母親(42)は一樹君の看病に追われ、病院に寝泊まりする。長女(2)を実家の両親に預けても、仕事に出る余裕はない。「家族が自宅、病院、実家でばらばらになり、生活費や交通費がかさんでいる。治療がいつまで続くか分からない中で、負担が増えるのはつらい」と父親は話す。

 小児慢性特定疾病は原則18歳未満の患者が助成対象。従来の対象は514疾病だが、昨年の難病法制定に伴い制度が見直され、同法が施行された今年1月から704疾病に増えた。これにより対象患者は現在の約11万人から約15万人になると見込まれている。

 一方、制度の見直しで、入院中の食費について1食につき130円がかかるようになったほか、世帯収入に応じた医療費の自己負担の上限額が上がった。

 がんの再発を含む「重症患者」の自己負担は従来ゼロだったが、見直し後は月最大1万円になった。

 すでに助成対象になっている患者には経過措置として3年間の負担軽減が実施される。また自己負担割合は3割から2割になるため、負担が減る患者もいる。しかし現在の助成対象のうち負担増となる患者は65%を占めると厚生労働省は試算している。

 「がんの子どもを守る会」(台東区)は昨年7月、「患者家族には精神的・経済的に大きな負担がかかり、20歳以降の(後遺症などに対する)取り組みもほとんどなされていない」として、重症患者らの負担軽減を求める請願書を1万8708人の署名とともに厚労省に提出した。

 ソーシャルワーカーの樋口明子さんは「助成対象となる疾病が拡大したことは歓迎したいが、特に入院期間が長い小児がん患者については、医療費以外にも多くの出費がかかる現状を考慮する必要がある」と話している。