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免疫不全のサイン「口腔カンジダ」【研修最前線】

ステロイド投与時の免疫状態をどう把握するか。
数値化されたモニタリング指標がない中で、注目すべきことは。
国立国際医療研究センターエイズ治療研究開発センターの渡辺恒二氏が解説する。


ステロイド投与時の口腔カンジダ

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渡辺 では、SLEでステロイドを導入した症例7の経過を追っていきましょう。ステロイド開始3週目に入り、ここまでは順調にいっています。しかしここで実習生が朝、先生方に話しかけました。「カンジタがある」と。

 では対応はどうすべきでしょうか。カンジタの特効薬であるフルコナゾールを飲ませておけと答える。それからカンジタの診断のために培養をとりあえず取っておこうと言う。カンジタ菌血症も念頭に血培培養を指示する。食道病変のリスクを考えて上部消化管内視鏡をオーダーする。それとも、気持ちを新たにして身構える。さて、どのような対応が考えられるでしょうか。


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 答えはこんな感じです。フルコナゾールは別に飲んでもいいと思いますが、一番大事なのは、気持ちを新たにして身構えるということですね。好中球減少であれば血液検査で好中球を数確認できるのですが、ステロイド投与時、細胞性免疫不全の患者さんを診療する点で難しいのは、免疫状態を(血液検査の)数値では測れないという点です。ですから、予防のうがいでフロリードゲルを使用しカンジタを消してしまうと、それは免疫不全のサインを消してしまうことになってしまいます。繰り返しになりますが、最初の質問で提示した抗真菌薬でのうがいはあまり良いことはないということになります。


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 ステロイド投与時の免疫状態については、数値化されたモニタリング方法がありませんので、モニタリングが難しいのが実情です。どうやってモニタリングするかというと、カンジダのような口腔感染もそうですし、カリニ肺炎を発症した場合には(それだけ細胞性免疫が低下していることを意味しますので)他の日和見感染症を発症する率も高くなります。発症した日和見感染や reactivation されている病原体から免疫状態を類推します。

 一方で、ステロイドの総投与量や投与期間からどのような日和見感染症に注意すれば良いかある程度予想でき、各領域のガイドラインでは解説されています。それを参考にまずはステロイドを始める前から、どう診療していくか大まかに計画していくことも大事になります。

 たとえ無症状であっても、reactivation の血清マーカー測定や画像検査を計画する。早め早めに、何か出てくる前に、「これに今度は注意したほうがいいな」と考えていく。その心構えが大切です。