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医療再生 テレビ会議システム利用

健康講座 遠隔地へ中継

 地域医療に力を入れる旭川医科大学(旭川市)が、テレビ会議システムを使って大学と複数の会場を同時中継する無料の医療講演会を重ねている。「どこに住んでも最新の健康情報が得られる社会の実現」を目指す同医大の取り組みに、道なども「エリアが広く、過疎化が進む道内では特に有効だ」と期待を寄せている。

 「専門医の話 直接聞ける」

■利尻など10会場

 同医大は5月29日、高齢者を中心に患者が多い不整脈の一種「心房細動」をテーマにした講演会を開いた。講師は、循環器内科が専門の川村祐一郎教授。同医大内にある、インターネット回線を使ったテレビ会議ができる「カンファレンスルーム」から、音声と映像が約200キロ・メートル離れた利尻町役場など道内10会場に生中継された。100人集まった会場もあったという。

 質問の時間に、旭川市の会場にいた男性(73)は「晩酌をしても大丈夫ですか」と尋ねた。男性は心房細動で診察を受けているといい「病院では聞きづらいことをざっくばらんに聞けた」と安堵あんどしていた。

■予防医学の切り札

 旭川医大では1994年から、専門医が足りない遠隔地の病院を支援してきた。「遠隔医療センター」(吉田晃敏学長がセンター長を兼務)があり、現在は国内50か所、海外4か国の医療機関とネットワークを構築している。

 同医大と、遠隔地の病院の診察室や手術室とを結び、専門医が医師の問診や手術について助言したり、検査の画像を送ってもらい、診断を助けたりしている。現在、年間約5000件診察、診断をしているという。

 講演会は2004年に始まり、市民に開放されている。5月までに計42回を数え、がんに関わることなど住民の関心が高いテーマを保健師らから募り、学内で決めている。

 吉田学長は「病気にさせない『予防医学』への関心は年々高まっている。遠隔医療のノウハウを使った切り札で、医療現場の負担軽減にもつながるはずだ」と、強調する。現在、受信のみも含め10市町12か所で受講可能になっているという。

■会場確保が課題

 会場に役場ホールを開放した利尻町の担当者は「専門医の話を町民が直接聞ける機会は貴重だ」と話す。道も「内容も、市民の関心を呼ぶよう研究している。予防医療に地域格差を生じさせない取り組みとして後押しする」(地域保健課)と評価する。

 一方で、中継に必要な通信回線を完備し、多くの住民が集まれる場所の確保が課題となっている。営利目的でないため、使用料の高いホールなどは使いづらいという。総務省地域通信振興課は「普及に向けて何が必要なのか、検討する必要がある」と話している。