記事一覧

[肝炎対策] 職域における肝疾患患者支援、産業医等の関与が好結果生む

厚生労働省は3月17日に、肝炎対策推進協議会を開催した。

 この日は、平成26年度の肝炎対策予算について厚労省当局から報告を受けたほか、委員らからプレゼンテーションが行われた。


 まず、自治体における肝炎対策の取組状況をみると、平成26年1月時点で「肝炎対策に特化した計画」を策定している都道府県は23(平成25年1月時点では13)、策定予定・検討中の都道府県は3(同13で、10の都道府県が策定を完了している格好)となっている。ただし、平成25年度中(平成26年3月まで)に、全都道府県で「肝炎対策に特化した計画」の策定あるいは、都道府県策定における計画(保健医療計画やがん対策推進計画など)に肝炎対策が位置づけられる予定だ(p18~p20参照)。


 またこの日は、東海大学医学部の渡辺教授から「職域における慢性ウイルス性肝炎患者の実態調査と、それに基づく望ましい配慮の在り方」に関する研究結果が報告されている(p73~p103参照)。

 渡辺教授は、40歳以上の1%が肝炎ウイルスキャリアであることや、早期発見・早期治療が重要なことから「職域における肝炎検診の意義は大きい」と強調。

 しかし企業・事業者においては、肝炎ウイルス検査等は低調だ。1000人以上の大企業等でも肝炎ウイルス検査の実施率は37.3%、また肝炎ウイルスキャリアに対する就業上の配慮は43.5%にとどまっているのが実際だ。企業が肝炎ウイルス検査を実施していない最大の理由は「労働安全衛生法による定期健診項目に規定されていないから」(79.7%)である(p77~p84参照)。

 一方で、産業医が積極的に関与する場合には、「正しい知識の啓発」や「潜在的未治療者への受診勧奨」「職場との連携」などの好事例がある(p95参照)。

 こうしたことを背景に渡辺教授は、肝炎ウイルスに感染している労働者の就労支援には、「産業医や肝疾患相談センター、産業保健推進センター、保健所などの連携が必要」と訴えている(p103参照)。


 なお、平成26年度の肝炎対策予算については、次の事項・金額が計上されている(p8~p14参照)。

●肝炎治療促進のための環境整備:100億円(前年度は100億円)(p10参照)

●肝炎ウイルス検査等の促進:32億円(同29億円)(p11参照)

●健康管理の推進と安全・安心な肝炎治療の推進、肝硬変・肝がん患者への対応など:7億円(同7億円)(p12参照)

●国民に対する正しい知識の普及啓発:2億円(同2億円)(p13参照)

●研究の推進:46億円(同50億円)(p14参照)