記事一覧

口腔ケアで健康維持 気仙沼、医療支援の輪広がる

震災直後の医療支援が、地元に引き継がれ、形を変えた支援が続いている。こうした中長期的な医療支援のモデルの一つが、宮城県気仙沼市の口腔(こうくう)ケアだ。

 口腔ケアは、口の中を清潔にし、乾燥を防ぎ、虫歯の残痕を抜いたり、入れ歯を調整したりする。高齢化した地域の復興には、口から食べ、健康を維持するケアの充実が欠かせない。だが、気仙沼では医師や歯科医師らの連携が十分に行われていなかったという。

 山梨市立牧丘病院長の古屋聡さんら支援者の助けもあり、地元の歯科衛生士や管理栄養士らによる「気仙沼・南三陸 『食べる』取り組み研究会」ができた。事例を学ぶ報告会のほか、メーリングリストで助言が受けられる。

 震災直後から、個人参加を全国から受け入れる団体が設けられ、今も続く。家庭医もいれば歯科衛生士もいる。地元の歯科衛生士、金沢典子さんは「口腔ケアって何という感じだったが、最新の技術、知識に触れ、自分たちでもやろうという思いになった」。

 成果も出てきた。馬場敬喜さん(84)は2012年秋、脳梗塞(こうそく)で倒れ、胃ろうになった。希望は「刺し身を食べること」。13年春に転院した病院の理学療法士らが熱心にケアした結果、7月におかゆが食べられ、10月に退院できた。正月、マグロの刺し身を口にした。

 市内には今も言語聴覚士など摂食・嚥下(えんげ)リハビリの専門職は少ない。地元の歯科医師、金沢洋さんは「支援はなんでも受けよう、そして今ここにいる人材で何とかしよう、とした。その結果、やる気のある人が垣根を越えられた」という。

朝日新聞 2014年3月7日(金) 配信