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更生へ摂食障害ケア 女性受刑者用プログラム 北九州医療刑務所 全国初

 摂食障害がある女性受刑者の更生プログラムを、北九州医療刑務所(北九州市)が策定した。窃盗を繰り返す女性受刑者に過食症や拒食症の人が少なくないことから、治療で再犯防止を図る。カウンセリングや投薬などに加え、再犯の背景に摂食障害があることを自覚させることが柱。4月にも本格運用を始める方針で、法務省によると全国初の取り組みになりそうだ。

 同省が昨秋に全国の女性受刑者4159人に行った調査では、124人に摂食障害があり、うち89%が窃盗罪を含む服役だった。過食症時に増える食費への不安から食品を盗んだ例が多いが、全国の刑務所では治療態勢が不十分で、再犯防止が課題になっていた。

 北九州医療刑務所では、九州大学病院心療内科で治療実績がある滝井正人医師(63)が常勤医になった昨年春から、1年掛けてプログラムを作成。摂食障害の受刑者は、病歴が長くても「自分が病気」という認識が低い傾向にあるため、受刑者による2週に1度の「集団ミーティング」で障害の原因などを語り合い、障害の自覚を促す。決められた食事量を守れない場合にペナルティーを科する「行動療法」は、食事量に応じてテレビ観賞や入浴を制限することで、自己管理能力を育む。障害や罪と向き合うため日記帳も導入する。

 プログラムの実践で、摂食障害がある13人のうち5人が約半年で食事量に改善傾向が見られたという。滝井医師は「全国的な更生モデルを目指し、今後も有効性を検証していきたい」と話す。法務省矯正局は「全国的に取り組みが進んでいなかった。先行する北九州の成果に期待したい」としている。
西日本新聞 2014年3月4日(火) 配信