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「ネグレクト」は虫歯が多い/口腔内の外傷から暴力発覚 診察で子供の虐待防止を 静岡県歯科医師会 シンポジウム

 ◇「恐れ」あるなら即通報

 県歯科医師会などは1日、子供の虐待防止に向けたシンポジウムを静岡市葵区で開いた。虐待防止には早期の発見と通報が重要と言われるが、普段の診察や学校の歯科検診などから虐待が分かった例もある。同会地域保健部長の竹内純子理事は「少しでも虐待を減らすため、歯科医としても取り組みを考えたい」とあいさつし、児童相談所職員や県教育委員会、医師らを交え、情報提供のあり方などを意見交換した。

 昨年に続き2回目。社会的な認知度の高まりもあり、子供の虐待相談や保護の件数は年々増加傾向にある。県内にある児童相談所の昨年度の相談件数は1641件、一時保護の件数は527件で、いずれも10年前の約3倍になっている。また厚生労働省によると、2011年度には全国で少なくとも58人の子供が虐待死した。

 小中高校と特別支援学校では、1年に1回の歯科検診が義務づけられており、口内の状態が子供たちからの「サイン」となることがある。食事などの育児を放棄する「ネグレクト」の場合は、口の中が不衛生だったり虫歯が多かったりする傾向があり、ほかにも口腔(こうこう)内の外傷から暴力を受けたことが発覚した例もあるという。

 県歯科医師会は先月、虐待早期発見のためのチェックリストも作成し、会員の歯科医に配布して周知を図っている。

 児童虐待に詳しい東京歯大法歯学講座の花岡洋一准教授は、「チェックリストの内容を頭に入れ、虐待の『恐れ』があるなら即通報すべきだ。虐待じゃないかもと通報を怖がるより、子供が死ぬ可能性を恐れてほしい」と早期通報の大切さを訴えていた。