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歯周病治療はアルツハイマー病の進行抑制につながる可能性

近年歯周病は、糖尿病やアテローム性動脈硬化症などの全身疾患との関連が指摘されている。アルツハイマー病との関連を示唆する研究も散見されるが因果関係については不明だ。

 そこでアルツハイマー病(AD)のモデルマウス(APP-Tg)に、歯周病病原菌を投与して歯周病を発症させ、ADの病理の進行への影響を検討したところ、コントロール群に比べて、認知機能の増悪、Aβの沈着の増加、TNF-αの増加などが確認され、歯周病がADの病態増悪に関与している可能性が示唆された。11月8日から10日に長野県松本市で開催された第32回日本認知症学会(JSDR2013)で、国立長寿医療研究センター研究所口腔疾患研究部の松下健二氏らが発表した。

 62週齢のAPP-Tgマウスの口腔内に歯周病病原菌Porphyromonas gingivalis(P.g.)を投与して歯周病を発症させ、認知機能評価のための行動試験、海馬および皮質のAβ量(ELISA法)の測定、免疫染色によるAβ沈着の画像解析などを実施した。

 歯周病を発症させていないコントロール群(n=12)に比べ、歯周病発症群(n=14)は、行動試験で有意に認知機能が悪化し、海馬および皮質におけるAβ40、Aβ42の量は、ともに有意に増加した(P<0.05)。Aβの沈着面積も、コントロール群に比べて歯周病発症群の方が有意に拡大した(P<0.001)。

 また、脳内のTNF-α、IL-1βも、歯周病発症群で有意な増加が見られた(それぞれP<0.05、P<0.01)。

 松下氏は、「本研究は、歯周病とADの因果関係を動物モデルで検討した初めての報告。軽症のAD患者に歯周病治療を行うことがADの進行抑制につながる可能性が示唆された」と結論。「歯周病がADを増悪させるメカニズムとしては、口腔から血液を介して、菌、サイトカイン、リポ多糖(LPS)などが脳へ運ばれ、なんらかの影響を与えている可能性がある」と考察した。