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ケアフード がん患者もおいしい食事楽しんで NPO「医療・福祉ネットワーク千葉」普及目指す

医療従事者やがん患者らでつくるNPO法人「医療・福祉ネットワーク千葉」(竜崇正理事長、県がんセンター内)は、抗がん剤投与や放射線治療の副作用などで食欲が落ちたり、手術の影響で固形物が飲み込みづらくなったりしたがん患者らに、治療しながらも、おいしい食事を楽しんでもらおうと「ケアフード」の普及に取り組んでいる。冷凍保存しやすく、調理する家族などの負担軽減につなげるのも狙いだ。【渡辺洋子】

 ケアフードは、旬の野菜や果物などをミキサーにかけたり煮込んだりして、シャーベットやムース状にしたものにアレンジを加えたものが主流だ。フランス料理の調理法を取り入れ、さまざまな料理に応用が利くタマネギやニンジンのピューレのほか、肉や魚類、パンをムースにするなど工夫を凝らしている。トマトやパイナップルをシャーベットにしたものもある。

 同NPOは3年ほど前からケアフードの研究を始め、これまでに患者約2000人にアンケートを実施。試食会や調理講習会を20回以上行ってきた。患者の要望を聞きながら、食感や味、栄養価に至るまで、取り組みに賛同するフレンチの山口賢シェフと試行錯誤しながら、独自メニューを考案している。

 県がんセンター(千葉市中央区)で今年7月に開かれたケアフードの試食会「夏のシャーベット祭り」では、マンゴーシャーベット、紫イモのムース、ヨーグルトのムースの3種が披露された。患者や家族550人が味を楽しんだ。NPO事務局によると、「入院中の子供たちの参加が多く、病室の友達にも食べさせたいと並ぶ姿も見られた」という。

 患者以外にも広げようと、昨年からは介護老人保健施設でのケアフード試食会も開始。竜理事長(69)は「食欲がなかった高齢者が『おいしい』と涙を流し喜んでくれた」と手応えを感じている。

 NPOは今後も病気の種類別に抱える「食」の問題点を洗い出し、患者のニーズに合ったきめ細かなメニューを考えていく方針だ。竜理事長は「いずれは、スーパーやコンビニで取り扱ってもらって、手軽にケアフードが楽しめるようにしたい」と語っている。問い合わせは事務局電話043・268・6960。