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神奈川歯科大 人体標本の資料館、医療従事者ら限定で公開

神奈川歯科大学(横須賀市稲岡町)は、実物の人体標本類などを展示した資料館「人体標本と100年史」を開館した。死者の尊厳を重んじながら医療の発展に役立てる方針から一般公開はせず、医療従事者や医療系、看護・福祉系の学生などに限って公開する。

 資料館は約1065平方メートル。人体標本室では、同大学の横地千仭(ちひろ)名誉教授(94)=解剖学=が、教授在任中の21年間に献体を受け解剖・保存した220体を展示。全身、頭部、骨格などさまざまな部位が、ホルマリンを主とする水溶液入り容器に納められている。

 同大学の飯村彰講師=同=は「実習期間が限られた学生に実物を見てもらう意味は大きい。立体的なイメージがつかみやすいため、開腹しない腹腔(ふくくう)鏡手術など次世代の医療発展に役立つのでは」と話す。

 100年資料室では開学以来103年間の史料を展示する。この中には、戦前に同大学敷地にあった旧海軍機関学校で英語教師を務めた芥川龍之介が翻訳したレオナルド・ダビンチの解剖に関する文献も含まれている。

 このほか、歯科診療室を100年前、50年前、現代の3種で再現して診療技術の発展をたどる展示や、横地名誉教授が退官後に共著で発行した解剖学の図鑑、趣味で描いた人体にまつわる絵画、オブジェなども展示されている。

 17日の開館式典には、名誉館長に就任した横地名誉教授らが出席した。初代館長の鹿島勇・同大学理事長は「人体の神秘を通じて明日への生きる意欲と活力を得る場にしていきたい」と述べた。

 同館は医療関係者にのみ予約制で公開する。
毎日新聞社 5月19日(日)