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したたかに自民回帰 発言力拡大狙う 「潮流―2013参院選 団体を追う」医師会と歯科医師会

前回参院選で打ち出した民主党重視路線と決別し、医師会と歯科医師会は自民党回帰をしたたかに進める。狙いは医療行政への発言力拡大だ。日本医師会(日医)の政治団体、日本医師連盟(日医連)は昨年末の衆院選直後、自民から組織内候補として日医の羽生田俊(はにゅうだ・たかし)副会長の擁立を決めたが、戦略は半年以上前から練っていた。一方の民主は離反を嘆くばかりだ。

 「環太平洋連携協定(TPP)で心配をいただいたが、国民皆保険は守るとあらためて約束させていただく」

 都内のホテルで14日に開かれた日医のパーティー。拍手で迎えられた安倍晋三首相が「今年は特別な年。参院選で当選できるよう全力を挙げる」と、ひな壇の羽生田氏にエールを送った。

 対照的に、民主の海江田万里代表のあいさつは拍手がないまま始まった。「民主の議員は多くないが、お招きいただき感謝申し上げる。ここに集まった人の気持ちは一つ。国民の医療を守ることに尽きる」と、精いっぱい秋波を送ってみせた。

 日医では昨年4月の会長選で親民主の原中勝征(はらなか・かつゆき)氏が破れ、横倉義武(よこくら・よしたけ)会長が誕生。横倉氏は「与野党双方との対話」を掲げたが、同12月の衆院選で自民が勝利すると、3日後には自民からの候補擁立の意向を表明した。

 電撃的な擁立劇に見えたが、布石は打ってあった。昨年6月、都内のフランス料理店。自民の医療関係幹部議員とテーブルを囲み、日医役員が見守る前で「組織内候補を育てたい」と"復縁"を申し出ていた。

 日医連は2010年の参院選で民主候補を推薦。自民、みんな両党の候補も支援したが、3人とも落選した。07年も組織内候補が敗北している。「3連敗は許されない」(日医連関係者)との覚悟で、今回は候補を1人に絞って総力を傾ける。

 日医連幹部は「診療報酬改定やTPPに関し、与党の中で意見を反映させたい」と意気込む。

 民主の閣僚経験者があきらめたように解説する。「地方の医師会は自民系の首長や地方議員との関係が深く、民主党政権でも自民寄りのままだった。当然の帰結だ」

 日本歯科医師会(日歯)の政治団体、日本歯科医師連盟(日歯連)の場合、自民回帰はより鮮明だ。政権交代前の昨年10月、早々と自民現職の石井みどり氏の推薦を決定。さらに神奈川選挙区の自民候補に前理事長の島村大(しまむら・だい)氏を送り込む。

 日歯連の支援で3年前に当選した民主の西村正美氏は「次の改選期に組織内候補として出たいが、選ばれるかどうか」と不安を隠せない。