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歯型データ化、身元照合 宮城の警官がソフト考案

1万5千人を超える死者を出した東日本大震災。犠牲者の身元確認が困難を極めた中、遺体と行方不明者の歯型をそれぞれデータ化、照合するパソコンソフトを宮城県警の警察官が考案し、多くの遺体を家族の元に帰すことができた。現在は東北大が協力する大規模な照合システムに引き継がれ、成果を挙げている。

 震災では、津波で家屋や所持品が流失し、身元確認の資料となる行方不明者のDNAや指紋などが採取できないケースが多発した。また、犠牲者が多いために遺体安置所が各地に点在。交通や通信網の寸断で情報が混乱し、不明者との情報を突き合わせる作業がなかなか進まなかった。

 県警気仙沼署は、身元確認の拠点となる庁舎自体が被災。管轄する気仙沼市では千人を超える犠牲者を出し、同署は最も多い日で、1日に111体もの遺体を収容した。

 混乱の中、同署刑事課員だった塗伸悟(ぬり・しんご)巡査長(34)=現・若柳署=は、上司に遺体の身元照合システムを考えるよう指示される。大学院で3D技術を研究し、ソフトウエア会社での勤務経験を買われてのことだった。

 塗巡査長は、遺体の検視で記録した「C2」「インレー」といった虫歯や治療痕などを示す専門用語に注目。行方不明者の家族に通院先からカルテを取り寄せてもらい、地元歯科医の指導を受けながら、検視データとカルテデータをパソコンに入力し、検索すると双方が一致する項目数を算出するソフトを、震災の約1カ月後に作り上げた。

 このソフトだけで身元は確定しないが、該当しそうな行方不明者を大幅に絞り込むことができた。気仙沼署員の間で「塗システム」と呼ばれて重宝され、これまでに94人の身元判明につなげた。

 遺体が見つかるたび気仙沼署には、家族を捜す被災者が照会に訪れていた。塗巡査長は「カルテがあれば、短時間で本人かどうかの可能性を伝えることができたのは良かった」と振り返る。

 宮城県警はその後、東北大の協力を得て、より大量のデータで歯型を照合するシステム「デンタルファインダー」を開発し、塗システムのデータも移した。他県警の歯型データも集め、新システムで170人超の身元を特定している。

 宮城県警幹部は「歯型鑑定は、身元特定でDNA鑑定を上回る結果を出した。遺体が見つかる限り、鑑定作業を続けていきたい」と話している。