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食べ物が美味しくない

味覚の加齢による変化についてお話します。味覚障害の原因は、特発性(原因が不明)、薬剤性、感冒後、亜鉛欠乏症、全身疾患(糖尿病、腎不全、肝障害、消化器疾患、消化管術後など)、鉄欠乏性などです。特に65歳以下の方の味覚障害の原因で最も多いのは特発性で、心因性、感冒後と続きますが、65歳以上の方では薬剤性が最多で、心因性、特発性と続きます。味覚の受容器が日々生まれ変わるためには、亜鉛が必要です。亜鉛欠乏は、コンビニ弁当だけ等の偏食による摂取量の低下と、利尿剤、降圧剤、糖尿病薬、肝疾患治療薬などによりたくさんの亜鉛が消費される場合に起こります。またいびきや舌・口内炎、唾液分泌低下などによる口内乾燥も、味覚障害を助長します。耳鼻咽喉を詳細に診察して、原因を検索しますが、特定できない場合もあります。亜鉛欠乏が疑われる時には亜鉛を投与し経過をみます。心因性の場合は、亜鉛よりも抗不安薬が奏功します。
 予防はバランスの良い食事を取る事ですが、特に日頃から亜鉛を多く含んだ食材(日本茶、牡蠣、レバー、かずのこ、ココア、ナッツ、みりん干し、煮干し、赤味噌、カニ、モズク酢など)の摂取をお勧めします。多くの科を受診している方は、必須薬以外の整理が必要です。咀嚼機能の低下や唾液の分泌低下が味覚の低下につながるので、義歯の調整・管理や口腔内の清掃保持が必要です。趣味や友人、家族との交流を充実させ、日々楽しい食事を取るよう心がけましょう。
           耳鼻咽喉科・アレルギー科・頭頸部外科
                  (医)くまいクリニック