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のみ込む力低下、菌侵入

有料老人ホームで3月中旬、車いすの男性(86)が、施設の看護師らに介助されながら、内視鏡を男性の鼻から喉へ通し、食道と気管の入り口の様子をモニターに映し出して、うまくのみ込めるかどうかを確認した。男性は認知症を患っており、介護認定は中程度にあたる要介護3。家族は、かむ習慣を通じて認知症の改善につながることを期待し、普通の食事を希望したが、男性は10日前に食べ物を気管に詰まらせて窒息しかけたばかり。それ以前にも肺炎を何度か繰り返していた。高齢者に多い「誤嚥性肺炎」とみられた。誤嚥性肺炎は、食べ物などを食道に送り込む「嚥下反射」や、異物が気管に侵入するのをせき込んで防ぐ「せき反射」の機能が低下することで起きる。
 口の中には、様々な常在菌が潜んでいる。食べ物と一緒に菌が気管内に入ると、体の抵抗力が落ちている高齢者は感染しやすい。何度も繰り返すのも誤嚥性肺炎の特徴だ。脳卒中の後遺症などで、運動機能に障害がある場合は特に注意が必要だ。治療は、原因として多い肺炎球菌や黄色ブドウ球菌などに効果のある抗菌薬を用いる。脱水症状の緩和や栄養補給のため点滴を行うことが多い。男性は日ごろから、唾液が喉につかえ、声がガラガラしていた。この日の検査でも、ペースト状の粥がなかなか食道に下りていかず、喉にとどまった。普通の食事では、誤嚥の危険性が高いと考えて食べ物をミキサーにかけた食事を続けてほしいと施設職員に説明した。
                   読売新聞 2012.3.29