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患者を生きる 歯が不足 骨移植勧められ 子どもの病気 口唇口蓋裂4

「口唇口蓋裂」の治療を続けていたAさん(20)は、もともと歯ぐきの中の「歯の元」になる部分が少なく、乳歯も永久歯も10本ほど足りなかった。上の歯ぐきの骨は、2番目の前歯から犬歯が生える部分にかけて、左右2ヵ所が大きく欠けていた。この影響もあり、中学生になっても上の乳歯の前歯4本と犬歯2本の計6本がなく、奥歯の一部も生えてこなかった。上下の歯がかみ合うのは奥の1点だけ。小さい頃から食事は、ほぼかまずに、そのままのんでいた。かみ切りにくいタコやイカのほか、ゴボウやエノキなど繊維質のものが特に食べにくかった。食べ物の好き嫌いはなかったが、1回の食事に1時間以上、ときには2時間近くかかることもあった。
 歯ぐきの骨がない部分には歯が生えない。このため、自分の腰骨やすねの骨から「海綿骨」という骨髄の骨を少し取り、歯ぐきに移植する治療法が広がりつつあった。骨移植は一般的に、犬歯が生え替わる前の7~9歳のころに検討することが多い。骨移植の際は、歯ぐきの粘膜を切り開いて「ポケット」を作り、そこに海綿骨を詰めて閉じる。海綿骨は体内に吸収され、歯ぐきの骨が新たにできる。うまくいくと3ヶ月ほどで骨が定着し、歯列矯正によって永久歯に移動する土台になる。
             朝日新聞 2012.2.24