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歯周病と糖尿病

 昔から歯科医の間では、糖尿病の人は歯周病になりやすく、また悪化しやすいことが知れられていました。高血糖の状態が続くことで体の免疫機能が低下し、歯周病菌が増殖しやすくなるためと考えられています。ところが近年、歯周病が糖尿病の症状を悪化させるという逆の関係を示唆する研究報告が相次いだことから、歯周病と糖尿病は互いに悪い影響を及ぼし合っていると考えられるようになりました。
 中でも歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)から血液中に移行した歯周病菌が毒素をまき散らすことで、脂肪組織や肝臓から、サイトカインの一種であるTNF-αの分泌が活発になることが明らかになっています。サイトカインとは特定の細胞に情報を伝達するタンパク質のことです。歯周病なんて歯科に行けば治ると考えている方が少なくないのですが、現在の歯周病治療では進行を抑えることしかできません。
 初期の歯肉炎の段階なら適切なブラッシングや歯石の除去などで歯肉は元の状態に戻りますが、重度の歯周病になってしまうと歯周組織の回復はほとんど期待できないのです。
           北海道新聞 2011.11.30