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受験生離れ、国試不振…歯学部統廃合論も- 歯学部サバイバル時代(上)

文部科学省によると、国公立、私立を合わせた全国29歯学部の今年度の入学定員は計2459人だが、入学したのは2158人(87.8%)。11の歯学部で定員割れとなった。
 特に、私立大の苦戦ぶりは深刻だ。全国に17ある歯学部のうち、今年度は10大学(58.8%)で入学者が定員を割り込んだ。定員に対する充足率は、最低の奥羽大歯学部で25%と2割台になった。また、競争率が2倍未満の歯学部は14校(82.4%)で、松本歯科大では受験者81人全員が合格した。

 歯学部全体の受験者数は、2008年度の1万359人から翌09年度は7122人に激減。10年度も6472人に減少したが、今年度は6805人と微増した。「下げ止まり」との楽観的な見方もあるが、これまでの減少幅を考慮すれば改善したとは言いにくい。

 受験生による歯学部離れの背景には、歯科医の過剰供給問題があるとされる。
 1960-70年代の学部増設などに伴い、歯科医の養成数は急激に増加。厚生労働省によると、歯科医院数も2009年には6万8097軒で、1984年からの25年間でほぼ6割増えた。一方で、医療費全体に占める歯科医療費の割合は、62年度は12.4%だったが、08年度には7.4%にまで下がった。

 大学関係者らは、このほかにも、▽歯科医の「ワーキングプア」などの報道▽経済状況の悪化▽医学部の定員増―などが、受験生の歯学部離れに拍車を掛けているとみている。
 「今や歯学部を受ければ合格する状況。学生の質低下が避けられない」―。そんな嘆きの声すら出始めている。

 学生不足に喘ぐ中、歯科医師国家試験(国試)の結果が振るわずに苦悩する大学もある。文科省によると、今年の新卒者の国試合格率は、全体で81.8%だった。これに対し最低の岩手医科大歯学部は64.8%で、最高の広島大(100%)との間には、35.2ポイントの格差がある。

 優秀な学生を集められずに国試の合格率が低迷し、それが受験生のさらなる歯学部離れを促しているとの見方もある。