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ためになるお口の話 ぬるぬるの正体ムチン

「うがいをすればするほど口の渇きがひどくなるんです」口の渇きに悩む多くの人が、そんな経験をしているようです。渇きを癒そうと水で何度もうがいをしたら、渇きが余計にひどくなる-。これはうがいのしすぎで唾液中の大事な物質まで洗い流してしまうからです。
 その物質は「ムチン」と呼ばれる、ぬるぬるした粘液成分で、トロロイモやナメコ、納豆にも含まれています。また、動物の分泌する粘液には、ほぼ全てムチンが含まれており、口をはじめとして消化管、鼻腔、膣、目の表面の粘膜はムチンの膜に覆われています。ムチンには、粘膜に対する保水・保湿作用と潤滑・保護作用があります。
 例えば、目は、ムチンを含む涙液により、まばたきや眼球をぐるぐる動かしても痛むことはありません。口の中では、唾液のムチンが舌や頬などの粘膜の働きを滑らかにし、食べ物の摂取や発声発音などを助け、粘膜が傷つかないよう保護してくれるのです。また、ムチンの膜は保水性が高く、その下の粘膜の水分蒸発を防いでくれます。さらに、食品中の有害化学物質や農薬、毒素、ウイルスが口の中や消化管の粘膜表面に触れるのを防げる、天然の防御層となっています。
 唾液が気持ち悪がられ、嫌われる元凶は、ぬるぬるして糸を引くムチンですが、その姿とは裏腹に本当に大切な働きをしているのです。
 頻繁にうがいや歯磨きをするとムチンの補充が追いつかなくなり、かえって口の乾燥感が強くなるのは間違いありません。口の中が乾いてベタベタするからといって、何度もうがいをしたりせず、定期的に水分を取るようにしましょう。
      2011年(平成23年)6月22日(水曜日) 北海道新聞