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口腔粘膜の前癌病変と早期癌

旭川赤十字病院 歯科口腔外科 池畑正宏

口腔顔面領域における悪性腫瘍の臨床的特徴と口腔に限らず全身における癌の発生率について述べる。
 ・口腔顔面領域の癌腫は全癌腫の1%程度にすぎず、その80~90%は扁平上皮癌で  ある。
 ・性別は2:1で男性に多い。
 ・口腔扁平上皮癌の初期は臨床症状に乏しく、疼痛を伴わないことが多い。
 ・進行すると周囲に堤防状隆起と硬結を伴う、無痛性潰瘍を形成する。
 ・腫瘍細胞が神経浸潤した場合や末期には癌特有の癌性疼痛を生じる。
 ・リンパ行性転移を伴うことが多く、呼吸器(肺)や肝臓、骨への転移が多い。
 ・舌癌、歯肉癌、頬粘膜癌、上顎(洞)癌、口底癌の順で多い。人口10万人あたり口  腔・咽頭癌の発生率は長年あまり変化なく、5.3人程度である。
近年、ビスホスホネート投与患者の顎骨壊死についての報告が数多く聞かれるようになって来た。ビスホスホネートは骨粗鬆症や悪性腫瘍の患者に投与されており、作用機序、薬物学的特徴は別紙にて説明する。発生頻度は経口と注射では差があるものの、0.1~10%の範囲内である。顎骨壊死の治療については次のとおりである。
 ・顎骨壊死の有効な治療法はまだ確立されていない
 ・壊死組織の除去、露出骨の粘膜弁による被覆、露出骨縁の除去等はむしろ逆効果?   (保存的療法が無効の際に限られる)
 ・放射線骨壊死に有効な高圧酸素療法もビスホスホネート誘発骨壊死に有効との知見は  ない。
 ・休薬、または中止は効果ない?最近は中止を勧めている。
 ・腐骨を形成することは少ない。