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北海道・「災害弱者」を守るために 在宅障害者/口の中のケア

東日本大震災の被災者の避難生活が長期化する中、高齢者や障害者ら「災害弱者」へのケアが重要さを増している。道内から医療や介護の支援に派遣され帰還した専門家に、現地で起きている問題を聞いた。

 ◇在宅障害者、孤立危機 札幌のNPO法人、一軒一軒訪ね

 在宅の災害弱者に物資が届いていない――。札幌市東区のNPO法人「ホップ障害者地域生活支援センター」のスタッフ、滝桃子さん(28)は、災害弱者が支援の手からこぼれ、孤立しがちな現状を目の当たりにした。

 滝さんは地震半月後の3月26日から4日間、宮城県石巻市でボランティア活動に従事した。介護が必要な高齢者や障害者向けの「福祉避難所」は市内に約30カ所設けられ、そこにはケアに必要な物資が定期的に運び込まれる。一方で、避難所に行くことができず、自宅に残っている人たちもいた。

 市職員らは在宅の被災者を把握するため、拡声機を使って町中を巡回していた。しかし物資を届けるまでは手が回らない。自宅を出られない障害者らは、支援の網の目から漏れてしまうケースもあると聞き、ボランティアが一軒一軒訪ねた。物資をもらうために、余震が続く中、障害を抱える子供だけを数時間家に残して親が受け取りに行っていた家庭もあった。

 避難所も混乱していた。全国から介護の専門家が派遣されていたが、誰をどこに配置するかの仕切り役がいない。何をしていいか分からず、右往左往する介護職員もいた。滝さんらは被災者や先着のボランティアに「何か困っていることはありませんか」と聞くことから始めた。

 福祉避難所では「薬を取りに帰りたい」「家を片づけたい」という高齢者の送迎をしたが、車椅子のまま乗降できるリフト付きの福祉車は1台だけ。余裕を持って要望に応えられなかったという。

 滝さんは「今の段階で行政がすべてやるのは無理。集まった人手を生かすために、民間のボランティアに支援の指揮を任せるのもいいのでは」と話している。【佐藤心哉】

 ◇口の中のケア、大切に 栗山の歯科衛生士、高齢者を心配

 栗山町在住の歯科衛生士、千葉洋子さん(32)は2、3の両日、宮城県気仙沼市へ高齢者らの医療支援で派遣された。「避難所の人たちの歯や口腔(こうくう)のケアが見落とされがちになっている」と改善の必要性を訴える。

 千葉さんは資格取得前に陸上自衛隊に6年間在籍し、3月末までは夕張市立診療所で働いていた。同診療所を経営する医療法人「夕張希望の杜」の村上智彦理事長らが、震災を機に「支える医療研究所」を設立して派遣メンバーを募ったため、この要請に応じた。

 気仙沼市内には派遣された時点で歯科治療が可能な施設が2カ所しかなく、2日間でお年寄りら20人の入れ歯の調整や応急手当てを手伝った。現地では歯ブラシが支給され、口の中が清潔に保たれている人が多かったが、虫歯などの痛みを我慢している人もいたという。口の中で雑菌が繁殖すると肺炎などにかかりやすくなるため「ケアの大切さを、もっと自覚してくれれば」と心配する。

 被災地では歯科医を含む医療スタッフの不足が続き、疲労の蓄積も問題化している。千葉さんは「機会があれば何度でも被災地に行って役に立ちたい」と話す。【吉田競】
2011年4月8日 提供:毎日新聞社