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経鼻内視鏡検査は、見落としが多いとはいえない(下)

通常内視鏡でも無視できない偽陰性(見落とし)率が報告されている。発見された早期胃癌例の約半数が、1年前に通常内視鏡検査を受けていたとの報告もある。

 見落としの原因には、医師の診断力の限界や不注意、患者の苦しみのため十分な検査ができなかった、癌が発見不能な微細な状態であった、などが挙げられる。

 経口内視鏡検査では、いくら上手に検査をしても嘔吐反射は避けられない。人間の身体は、口にモノを突っ込めば嘔吐反射が起こるようになっているからだ。患者が嘔吐反射に苦しんでいるときは、検査する側も観察に専念できない。いくら高性能の内視鏡を使っていても、十分に観察できなければ癌の診断はおぼつかない。

 これに対し、鼻からのルートだと嘔吐反射を誘発しにくいため、検査が楽に受けられる。時間をかけて観察しても苦しくないため、検査をする医師も落ち着いて癌の診断に専念できる。結果として、癌を見落とす心配も、経口よりむしろ少なくなることが予想される。

 経鼻内視鏡は楽に受けられることが多いが、鼻腔が細くて内視鏡が入りにくい人や鼻の痛みを強く感じる人がいる。一方、経口内視鏡でも苦しくないという人もいるし、経口内視鏡でないとできない検査内容もある。必要に応じて両者を使い分ければよい。