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研修医が点滴誤投与、患者の血圧・心拍数上昇

医療事故の再発防止を目的に、過去の医療事故情報やヒヤリ・ハット事例(※)から原因や対策を知る「医療事故、ヒヤリ・ハット事例に学ぶ」シリーズ。今回は「薬剤を投与する前のダブルチェックを怠った」事例を取り上げます。
※出典:公益財団法人 日本医療評価機構の「医療事故情報収集等事業」
※事例は「研修医」のキーワードが含まれる事例から掲載。

【発生場所】
救急外来

【患者】
入院/20歳代(男性)

【疾患名】
アナフィラキシーショック

【当事者】
医師(1年)

【事故の内容】
 アナフィラキシー患者に観察室のベッドに臥床してもらい、研修医がポララミンを投与する予定がボスミンを誤って点滴投与した。

 看護師が点滴に貼ってある注射のラベルを確認すると、ポララミンであるはずがボスミンを投与したことを発見。

 直後、患者の血圧、心拍数が上昇。

 直ちに投与を中止し酸素投与、ポララミンをショットで投与し経過を見守ったところ、血圧、心拍数とも投与前の値に落ち着いた。

【事故の背景】
薬剤を投与する前のダブルチェックを怠った。
【改善策】
急ぐ場面であっても薬剤投与する前は必ずダブルチェックで確認する。

母子健康手帳デジタル化 吉備中央町、子どもの予防医療充実へ

岡山県吉備中央町は母子健康手帳をデジタル化する。先端技術によって医療や健康分野の課題解決を図る政府の「デジタル田園健康特区」(仮称)としての取り組み。スマートフォンがあれば、いつでも必要な情報が取り出せることから保護者の利便性が高まるほか、妊娠中の生活状況から出産、子どもの成長過程といった情報を町が集積して予防医療の充実につなげる。今夏にも利用を始める予定。

 導入するのは、岡山大発の医療ITベンチャー企業が開発したアプリ「WeLoveBaby(ウィラバ)」で、スマホにダウンロードして使用する。新たに妊娠した人だけでなく、すでに手帳を持っている人も使える。紙の手帳の発行も続け、併用してもらう。

 従来の手帳をアプリで撮影すると、記載情報を自動でデータ化して記録する。助産師や栄養士にオンラインで相談に乗ってもらったり、妊娠時の体調変化や子どもの食事内容をチャット形式で質問に答えて記録したりできる機能もある。

 それぞれの情報はアプリを通じてビッグデータとして集積され、町の関連施策の展開に活用する。母親や祖母が使っていた手帳を読み取ることも可能で、健診での情報や家族の病歴といったデータの蓄積が進めば、子どもの将来の疾患リスクの予測や早期対応に役立てられるという。

 5月上旬、町子育て支援センターでアプリのデモ体験会を開き、町内の母親8人が参加。外出先で急に手帳が必要になった際もスマホで確認できるといった利便性などをアプリの開発担当者が説明した。乳児から小学生まで4人の子どもを育てる女性(38)は「4冊も手帳を持ち歩くのは大変だった。アプリがあればとても助かりそう」と話した。

 参加者からは「予防接種の通知がほしい」「子どもが過去に服用した薬を記録したい」といった要望があり、町は機能拡大を検討する。

 町保健課は「アプリを通じて母子医療の安全安心を提供し、出生数増加に向けた仕組みづくりを進めたい」としている。

食事で認知症予防を 玉野の病院、朝食試食会始める

高齢化とともに認知症患者の増加が見込まれる中、由良病院(玉野市深井町)は4月から認知症予防の朝食メニュー試食会を始めた。認知症病棟で比較的状態が安定している朝に必要栄養素を摂取できるよう工夫してきた経験を伝えるとともに、専門医や管理栄養士の講座を通じ、地域に認知症への理解を広め、自発的に予防に取り組んでもらう。

 「認知症の根本的な治療はない。だからこそケアをしっかりする必要がある」「一人だけでケアしないで専門職に相談して」。4月26日の初回。精神科専門医、認知症診療医でもある南辰也院長が、集まった地域住民ら22人に認知症の基礎知識を優しく語りかける。

 吉田孝栄管理栄養士は「何か一つ食べれば予防できるものではない」として、バランスのよい食事▽摂取カロリーを守る▽塩分・糖分を控える―といったポイントを説明した。

 試食のメニューは、雑穀めしを主食に、サケの明太子あえ、厚焼きたまご、ヒジキの煮付け、ブロッコリーのごまあえ、ゆずなますをワンプレートに盛り付け。具だくさんのみそ汁を添えた。副菜は作り置きでき、朝から食物繊維、ミネラル、葉酸など幅広い栄養素を取れるようにしている。参加者は「朝からしっかり食べた方がいいんですね」「塩分が控えめでもおいしい」などと味わった。

 当面、月1回のペースで実施していき、将来的には朝食を提供する認知症カフェの開設を検討している。南院長は「初回から大勢参加いただきうれしい。認知症は誰がなってもおかしくない病気。地域の皆さんと一緒に予防の取り組みを進められれば」と話している。

長沼町で開業

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長沼町立病院の院長だった倉敏郎先生が、長沼町で開業されました。
胃瘻など消化器内科で著名な先生です。高校のクラスメートです。

日本の肝炎ウイルス持続感染者数、2035年までの動向を予測

 広島大学は3月17日、日本における2015年時点の肝炎ウイルス持続感染者数の算出と2035年までの動向を予測した結果を発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の田中純子教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Lancet Regional Health-Western Pacific」に掲載されている。

 B型肝炎ウイルス(HBV)・C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染は、肝硬変・肝がんの主病因であり、死亡リスクを上昇させる。2019年時点、WHOは世界で2億9600万人がHBVに、5800万人がHCVにそれぞれ持続感染しており、それが世界人口の4.4%に相当すると推定している。

 日本における肝炎ウイルス持続感染者数は、2000年時点で300~366万人、2011年時点で209~284万人と、厚労省肝炎疫学研究班から報告されている。HBワクチンの普及や、ウイルス排除が可能なHCV DAA治療薬の開発と普及により、WHOは2030年までのウイルス肝炎撲滅の目標を2016年に掲げた。日本の肝炎ウイルス対策への歴史は長く、1986年から開始したHBV母子感染防止事業や、2002年から開始された老人健康事業/健康増進事業による住民健診への肝炎ウイルス検査、2008年に開始した肝炎医療費の公的助成など、世界に先駆けて実施している。今後10年以内にウイルス肝炎撲滅を達成可能な主要国の一つに、日本が含まれている。

 今回、研究グループは、National database(NDB)や全国初回献血者集団等のリアルデータベース、政府の公表統計資料および、大規模血清疫学調査から得た成果をもとに、2015年時点のHCV・HBVの持続感染者数を算出。また、2035年までの予測を実施した。

障害者虐待最多2400件 20年度、家族や職員から

 厚生労働省は29日、2020年度に障害者が家族や福祉施設・事業所の職員から受けた虐待が2400件あり、被害者が2665人に上ったと発表した。前年度から198件、267人増え、いずれも過去最多。このうち1人が死亡した。自治体への相談・通報も9421件で最多だった。

 12年施行の障害者虐待防止法に基づく調査。厚労省は同法の通報義務が浸透したことが増加理由とみている。新型コロナウイルス感染拡大の影響については「一概に増加につながるとは言えない」としている。

 職員による虐待は632件で、被害者は890人だった。内訳(複数回答)は暴力や拘束などの身体的虐待が53%と最も多く、暴言などの心理的虐待が42%、性的虐待が16%だった。被害者は知的障害が72%。加害者は生活支援員が38%、管理者が10%などだった。死亡したのは、精神障害でグループホームに入居する40代の男性だった。

 家族による虐待は1768件、1775人。身体的虐待が67%、次いで心理的虐待が31%、障害年金を渡さないといった経済的虐待が17%だった。被害者は知的障害が48%、精神障害が42%。

 このほか、昨年8月に公表した職場での虐待が401件あり、被害者は498人だった。

運動不足で筋肉減少なぜ? タンパク3種関与、神戸大

運動しないと筋肉の量が減少するのは、細胞内のカルシウム濃度の低下が引き金となり、3種類のタンパク質の量が増減することで起こっていることを、神戸大の小川渉(おがわ・わたる)教授(糖尿病)らのチームが突き止め、米科学誌に15日発表した。小川教授は「筋肉の減少を抑制する治療薬開発につなげたい」と話している。

 チームは、動かないようギプスで固定するなどしたマウスの脚を特殊な顕微鏡で観察。細胞の外から中にカルシウムを取り込む入り口となるタンパク質「Piezo1」の量が減少し、細胞内のカルシウム濃度が低下することが分かった。

 さらにカルシウム濃度が下がると、免疫に関わる「インターロイキン6(IL6)」など2種類のタンパク質の量が増加。筋肉量を減らす働きをすることが分かった。

 IL6の働きを抑える物質をマウスに投与すると、脚を動かせないようにしても筋肉量は減らなかった。人でもこの3種類のタンパク質が筋肉量の減少に関わっており、これらを標的にした治療薬開発が期待できるという。

共食の機会を月に複数回以上もつことが高齢者の体重減少予防につながる可能性

東北大学は3月11日、共食頻度が「毎日」という人と比べて、「月に何度か」以上の頻度で誰かと一緒に食事を有する人では、体重減少のリスクに有意な違いは観察されなかった一方、「年に何回か」の人では1.07倍、「ほとんどない」人では1.17倍、体重減少リスクが高くなるという関係が観察されたと発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科の草間太郎助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Age and Ageing」に掲載されている。

 誰かと一緒に食事をする「共食」は、ヒトにとって基本的な社会活動の一つである。過去の研究から共食の機会を有することが健康状態の維持に有益である可能性が示唆されてきた。体重減少は高齢者において重要な健康問題の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが明らかとなっている。共食の機会を有することは、栄養摂取に影響する可能性があるが、これまで追跡研究により共食と体重減少といった栄養状態の悪化との関連は明らかにされていなかった。

 研究グループは今回、要介護状態にない高齢者を対象とした3年間の追跡調査から、共食の頻度と体重減少のリスクとの関連を明らかにすることを目的として研究を行った。

共食頻度が「毎日」の群と比較して、「年に何度か」以下の頻度では体重減少リスク「高」

 2016年と2019年に実施されたJAGES(Japan Gerontological Evaluation Study; 日本老年学的評価研究)調査に参加した要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を対象として、2016年から3年後の2019年時点までの間の「5%超の体重減少」の有無について、追跡研究を行った。

 5%超の体重減少は栄養状態の悪化の指標の一つであり、過去の研究から死亡リスクの上昇と関連することが示されている。共食の頻度については、「毎日」「週に何度か」「月に何度か」「年に何度か」「ほとんどない」の5区分を用いて、比較を行った。分析では、性別・年齢・教育歴・等価所得・婚姻状況・世帯人数・現在歯数・併存疾患(がん・脳卒中・糖尿病・認知症)・手段的日常生活動作・認知機能・うつ・野菜果物の摂取頻度・肉魚の摂取頻度・友人と会う頻度・ベースライン時点でのBMIの影響を取り除き、共食の頻度が「毎日」と比較したときの、それぞれの共食頻度の区分における相対的な体重減少のリスクを、ポアソン回帰モデルを用いて算出した。

 対象者5万6,919人のうち、3年間の追跡期間中に5%超体重が減少した人は15.1%(n=8,596)だった。また、共食頻度ごとの5%超体重が減少した人の割合はそれぞれ、「毎日」:14.3%、「週に何度か」:14.8%、「月に何度か」:14.6%、「年に何度か」:16.2%、「ほとんどない」:19.0%だった。

 他の要因を考慮して行った多変量解析の結果、共食頻度が「毎日」と比較したときに、5%超の体重減少のリスクが、「年に何度か」:約1.07倍(95%信頼区間:1.01-1.07)、「ほとんどない」:約1.17倍(95%信頼区間:1.08-1.27)において、統計学的に有意に高かった。つまり、共食頻度が「毎日」の群と比較して、「月に何度か」以上の頻度では有意な差が見られなかったものの、「年に何度か」以下の頻度では、体重減少のリスクが有意に高くなっていたという。これらの結果から、高齢者において、月に複数回程度以上、共食の機会を有していることが体重減少のリスクの低減に貢献している可能性が示唆された。

共食の機会をもつことが高齢者の健康維持に寄与する可能性

 新型コロナウイルスの流行は、高齢者の共食の機会に大きな影響を与えたと考えられる。今後は、流行状況を鑑みて、換気や人数制限といった適切な予防対策を実施した上で、人々が共食の機会をもつことが、高齢者の健康状態の維持に寄与する可能性がある、と研究グループは述べている。

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